20年ぶりの円安が話題になっている昨今、「これは悪い円安だ」といった表現もよく耳にします。
円安に悪いこと、良いことというのはあるのだろうかと疑問に思う方も多いでしょうし、「円安って何だろう」という根本的な疑問を持つ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
円安とは何なのか?
今回は、円安とは何か、円安はいつ起こるのか、円安は世の中にどのような影響を与えるのか、そしてなぜ円安が急速に進み、それが悪いことだと言われるのかを簡単に説明したいと思います。
まず、円安とはどういうことなのか、基本的なことを説明します。
ドルやユーロ、円など、世界中で使われている通貨間の為替レートや比率のことを指します。
例えば、1ドル100円が1ドル110円になると、円安になったと言えます。
これを直感的に理解するには、円安とドル高を表裏一体で考えるのが有効です。
通貨は交換されるものですから、一方の通貨が高くなれば、裏側の為替レートは安くなります。
1ドルが100円から110円になると、普通はドル高になったと考えますが、100円で1ドル買えなくなった、つまり円の価値が下がったと考えることもでき、これがまさに円安を表しているのです。
つまり、ドル円の価値だけでは円安か円高かはわかりませんが、他の通貨に対する円の為替レートを見れば、大まかな動きはわかるのです。
例えば、昨日1ドル100円、1ユーロ120円、1ポンド150円だったのが、今日は1ドル110円、1ユーロ120円、1ポンド150円になっていれば、ドルに対してのみ円安になり、他は何も変わっていないことになります。
したがって、円安にはなっていませんが、ドル高にはなっていると予想できます。
もし、1ドル110円、1ユーロ130円、1ポンド160円であれば、多くの通貨との関係で円安になっており、円安が進行していると考えることができます。
現在の円相場の状況
この前提で、現在の円相場の状況を見てみましょう。
ユーロ、ポンド、スイスフラン、豪ドルなどの主要通貨と比較すると、ユーロに対して円安、ポンドに対して円高と、軒並み円安が進行しています。
特にドルは他のどの通貨よりも強く上昇していて、ドル円相場は凄まじい円安の上にドル高が重なったという認識です。
なぜこのようなことが起こったのかを理解するためには、まず、通貨がどのように高くなり、また安くなるのかを理解することが必要です。
まず、通貨に限らず、経済全般は「みんなが欲しいものは高くなり、欲しくないものは安くなる」という原理で成り立っています。
これは株や通貨にも言えることです。
要するに、買われる通貨、つまりみんなが持ちたがっている通貨は高くなり、売られる通貨、つまり誰も持ちたがらない通貨は安くなるのです。
みんなが持ちたがる通貨とは?
では、みんなが持ちたがる通貨とは何でしょうか?
この問いに答える最も簡単な方法は、金利を見ることです。
簡単に言うと、通貨には金利があり、その通貨を持っているだけで一定の金利が得られるということです。
一般の方に馴染みがあるのは、銀行預金の利息です。
お金を預けると、年に数回、利息としてお金が増えます。
ゼロ金利政策が長年続いている日本では、預金の金利は0.00%程度が多く、数円、数十円といった涙が出るほどしか受け取れません。
そういう意味では、日本円はあまり持ちたい通貨ではありません。
しかし、つい最近までは、世界のほとんどの先進国が金融緩和政策や低金利政策を実施していて、ドルとユーロの金利差も大きくなかったので、円だけは特に持ちたくない通貨でした。
しかし、コロナ後のインフレや米国などの物価高により、インフレ抑制のための金融引き締めや金利引き上げの流れが急速に加速しました。
一方、日本では、物価があまり上がらず、景気回復も道半ばであるにもかかわらず、日銀は異次元金融緩和を維持し、金利をほぼゼロに抑えています。
どのような影響があるのか、わかりやすい例を挙げると、2012年4月27日時点の日米10年国債利回りは、米国が2.7%、日本が0.2%でした。
細かいことは無視して、単純に考えると、10年後にドル建てで資産を保有している場合、ドル資産は約30%増えているのに対して、円資産は2%しか増えていないことになります。
つまり、円を売ってドルを買うインセンティブがあるのです。
また、円が安くなる大きな要因として、原油をはじめとする天然資源の高騰があります。
買われる通貨は高くなり、売られる通貨は安くなる
先の原則にあるように、買われる通貨は高くなり、売られる通貨は安くなる、つまり、外国にたくさんお金を払う国の通貨は安くなり、外国からたくさんお金をもらう国の通貨は高くなる、ということです。
例えば、日本の会社が外国の会社から原油を買う場合、日本の会社は円を売ってドルを買い、そのドルを使って外国の会社に原油の代金を支払います。
国際取引は基本的にドルやユーロで行われるので、海外から物を買えば買うほど、円が売られ、円安になるのです。
逆に、日本企業が日本製の製品を海外で売る場合、ドルなどの通貨で売った分を円に換えて企業の収益にするため、円高になります。
このバランスが円安・円高どちらかの圧力になります。
しかし、最近の資源高により、日本へのお金の出入りを示す経常収支は赤字に転落しています。
かつては輸出大国として経常黒字を維持できることが円高の根拠でしたが、もはやその裏付けはありません。
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一概に円安が良いとか悪いとか言えるものではない
円安を悲観的に語ってきましたが、円安は基本的に通貨の交換比率に過ぎず、一概に円安が良いとか悪いとか言えるものではありません。
円安や円高の影響は、その人が属する業界によって異なります。
例えば、日本で作った製品を海外に販売する輸出型産業にとっては、円安はプラス要因になります。
例えば、1ドル=100円の時、日本で90万円かけて作った車をアメリカに輸出し、1万ドルで売れば、10万円の利益が出ます。
あるいは、その差を利用して、価格を下げて販売台数を増やすこともできます。
有名なところでは、トヨタ自動車は1円円安になると約300億円の収益増になると言われています。
逆に、海外から商品を輸入して日本で販売している企業は、円安になると大変なことになります。
例えば、1,000ユーロのフランスのブランドバッグが、1ユーロ=120円では12万円で仕入れられますが、1ユーロ=140円になると14万円になってしまいます。
値上げができなければ2万円の赤字、値上げをすれば売上が落ちます。
日本銀行は、円安は日本経済にとって総合的にみてプラスであり、総合的なメリットの方が大きいと考えてよいという見解です。
円安が悪いと言われる理由の一つ
現在の円安が悪いと言われる理由の一つは、資源価格の高騰の中で円安になるタイミングが悪いということです。
日本は資源の多くを輸入に頼っており、前述のように資源は基本的にドル建てで購入する必要があります。
円安になるということは、ドル建ての資源価格が変わらなくても、円の支払額が増えるということです。
これは、資源価格が安いときには大きな問題にはなりませんが、資源価格がかなり高くなっている現在では、もともと高い価格を掛け算でさらに高くするダブルパンチとなり、日本経済に深刻なダメージを与えています。
円安は貿易赤字の拡大にもつながるので、タイミングを逸した円安は負のスパイラルを生むことになります。
もう一つの円安の理由は、円安が急速に進んでいるため、逆に円高に向かうという根拠がないことです。
世界が金融引き締めに転じているのに、日銀が頑なに金融緩和を続けているのは、日本の消費が全く拡大せず、インフレ目標が達成できないからです。
日銀の異次元金融緩和は、インフレ率が上昇して景気が過熱するまで資金を投入し続けるというものでしたが、さまざまな理由でインフレ率はまったく上昇していません。
したがって、日本銀行は金融緩和政策をやめるとは言えないし、急激な円安に対する対策もありません。
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どのようなシナリオで円安が終焉を迎える?
まず、資源高が解消されることです。
また、先に述べたように、日銀の金融緩和策には出口が見えません。
むしろ、米国などのインフレ率がピークを超え、金融引き締めのペースが鈍化するシナリオの方が可能性が高いのではないでしょうか。
ドル円レートは20年前にも130円台で推移し、1998年には147円まで円安が進行しました。
円安が目立つようになりました。
昔は海外、特にアジアに行くと物価が安く、いろいろなものを買って豊かな気分になれましたが、今はアジアを含む他の国の人たちが日本に来て、日本は安いと言ってたくさん買い物をしています。
円安が強いということは、円の価値が下がることで起こる通貨の為替レートの下落が原因です。
円安は、円の価値が下がることで通貨の為替レートが下がり、海外との取引に影響を与えます。
日本経済全体から見れば、円高が絶対悪とは言えませんが、プラスとマイナスの両方の影響が予想されますが、日本に住んでいる人間にとっては、景気回復のない物価上昇や円資産の減少など、明らかな損失が予想されるのです。