今日のお題はこれです。
「最近積立NISAを始めたけど、今年の枠は使い切った方がいい?」というお話をさせていただきます。
このパートでは、これから「つみたてNISA」で40万円の非課税枠を使い切るべきかどうかについてお話しますが、まず、この記事の結論をお伝えします。
非課税枠を使い切ってしまうのも一案
1ドル=140円という歴史的な円安を背景に、円高ドル安に戻ると為替差損が発生するので、今、積立NISAを始めて年間40万円の非課税枠を使い切ろうか、という話をよく聞きます。
ただし、NISAの非課税枠は翌年に繰り越すことができないので、資金に余裕がある場合は、非課税枠を使い切ってしまうのも一案です。
NISAの非課税期間は長いですし、為替で多少損をしても、株価上昇のメリットの方が大きいと思われます。
そもそも、なぜこの記事を書こうと思ったかというと、こんな質問をよく受けるからです。
「これから積立NISAを始めようと思うのですが、40万円の枠を今年中に使い切った方がいいのでしょうか?
今始めると一括投資みたいになってしまうし、円安だし、怖いです。」
たしかに、10月から「つみたてNISA」を始めるとしたら、残り3ヶ月で40万円、月々13万円程度のかなり大きな投資額となりますので、ご心配はよくわかります。
この質問に対する個人的な答えは、「余剰資金があるのであれば、使い切るのが良い」というものです。
その理由は、NISA口座の非課税枠の余剰分は繰り越しができないからです。
例えば、「つみたてNISA」口座の非課税枠40万円のうち18万円を使った場合、未使用の22万円の非課税枠は翌年に持ち越すことができません。
このように、NISAの年間非課税枠40万円は、当年のみ使用でき、翌年への繰り越しはできないことを知っておきましょう。
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厄介なのは24年ぶりの超円安
しかし、現時点で厄介なのは、24年ぶりの超円安です。
米国の利上げで日米の金利差が拡大し、全く利息のつかない日本円が売られ、金利が上昇している米ドルが買われ、1ドル140円も円安になったのです。
2022年の年初には1ドル=114円でしたから、すでに20%以上円の価値が下がっていることになります。
このような状況で、今アメリカの株式に投資すると、円高になったときに損をすることになります。
例えば、ある米国株の株価が30ドルだった場合、1ドル140円での円建て評価額は4,200円(30ドル×140円)、その後、その米国株の株価が35ドルに上昇したとしても、1ドル100円での円建て評価額は3,500円(35ドル×100円)となり、為替差損でマイナスになってしまいます。
このため、「つみたてNISA」の場合でも、今はeMAXIS Slim米国株に投資しない方が良いという意見もあります。
米国株に投資した後に円高になると、為替変動による損失が発生する可能性があることを知っておく必要があります。
実際、eMAXIS Slim 米国株式の基準価額を見ると、過去最高水準に達しています。
eMAXIS Slim 米国株式の連動指標であるS&P500自体は2022年に入ってから下落傾向にありますが、基準価額は円安を背景に上昇し、直近では過去最高を更新しています。
そのため、この時期に米国株に投資すると、円安で基準価額が高くなるのではと心配される方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、そのような心配をされている方もご安心ください。
まず、「つみたてNISA」の長い非課税期間を確認しましょう。
例えば2021年に積み立てると2040年に非課税期間が終了し、2022年に積み立てた分については、2041年に非課税期間が終了することになります。
つまり、2022年に積立NISAに投資した場合、非課税期間を最大限に生かしたいのであれば、2041年までに投資額を増やしておく必要があるのです。
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米国株の過去のリターン
ここで、米国株の過去のリターンを見てみましょう。
米国株の代表的な指数であるS&P500の過去30年間の年平均リターンが現時点で10%であることを考えると、驚きです。
ただ、近年の株式市場は好調なので、将来のリターンは年率5%程度と見た方がよいでしょう。
しかし、米国は貴重な先進国であり、今後も移民により人口が増加するため、将来の成長も期待できます。
したがって、為替で多少損をしても、株価上昇の恩恵が勝るというのが個人的考えです。
仮に株のリターンを年5%とすると、「つみたてNISA」の非課税期間が終了する20年後には、株のリターンはおよそ150%になります。
仮に現在の1ドル140円が1ドル100円まで円高になったとしても、為替差損は-30%にしかならないので、長期投資における株価上昇のメリットの方が大きくなるのです。
したがって、長期投資で長い非課税期間を活用したいのであれば、今のうちに非課税枠を使い切っておくのも悪くない判断だと思います。
また、米ドルと日本円の為替レートは今後、長期的に円安になると予想されていることも知っておいてほしいです。
日本円の実質実効為替レートは、インフレやデフレなどの物価変動を考慮した上で、米ドルやユーロに対する相対的な円の強さを表すものです。
直近では70ポイントを割り込んでおり、これは1972年と同程度の円安水準といえます。
もっとも、これにはいろいろな考え方があり、もともと円の価値が高すぎたという見方もありますが、いずれにせよ、諸外国の主要通貨と比較して、日本円の実質的な価値が低下したと仮定してみましょう。
円の価値が下がった主な理由は、長らく続いたゼロ金利政策により、金利の高い通貨を保有した方が得になるためで、日本円の魅力が低下していると言えます。
個人的に長期的には円安が進むと考えています。
NISA(つみたてNISA)の改正まで待ったほうがいい?
資産所得倍増のため、「投資非課税」制度を恒久化し、年間投資枠を拡大する。
金融庁はその方針を固めました。
ただ、まだ何も決まっていないので、あまり気にせず、とりあえず使える非課税枠は使い切った方がいいと思います。
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まとめ
1ドル140円という歴史的な円安の中、米国株などに投資すると、円高に戻ると為替差損が出るので、今すぐ非課税のつみたてNISAを始めて、年間40万円の非課税枠を使い切ろうか、という話をよく聞きます。
NISAの非課税枠は翌年に繰り越すことができないので、資金に余裕がある場合は、非課税枠を使い切るのが得策です。
NISAは非課税期間が長いので、為替変動で多少損をしても、株価上昇のメリットの方が大きいと考えられるからです。